ヒラメの泳ぎ方の特徴を知れば、釣りにも何か役に立つ知識が得られるかもしれない。そう思い少し調べてみました。その結果、ちょっとしたことがわかりました。
- 大きなヒラメほどゆっくりと潜る
- 大きなヒラメほど水深の浅い場所を泳ぐ
- 大きなヒラメほど底からよく上昇する
- ヒラメは潮の流れに乗って移動する
- 沖で放流したヒラメは浅場を目指す
今回のお話しはこんな感じです。
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ヒラメの沿岸来遊行動を解析する
今回参考にした文献は『バイオテレメトリーによるヒラメの沿岸来遊行動解析 林 陽子 神水研研報第3号(1998) 』です。
バイオテレメトリー【biotelemetry】の意味については以下。
生物に小型の発信器などを取り付け、行動・生理・環境についてのデータを遠隔測定し、行動や生態を調査する研究手法。
by goo 国語辞書
今回の実験の舞台は相模湾西部海域
今回の場合は、1996年4月~1997年4月の間に5回に分けて発信機を取り付けた大きさの異なる5匹のヒラメを沖合で放流し、その後の行動について追跡しています。放流場所はヒラメの好漁場である相模湾西部海域です。
グーグルマップで見るとこの辺。
海底の等高線付きのマップはこちら。数値が深さを表しています。さらに地図中のNo.〇というのは1回目から5回目の放流場所を示しています。
放流後のヒラメの移動方向
まずは結果からいきましょう。
放流1回目から5回目までのヒラメの放流後の移動結果は以下のようになりました(画像引用:バイオテレメトリーによるヒラメの沿岸来遊行動解析 林 陽子 神水研研報第3号(1998))
1回目(1996年4月22日11:34放流)
11:34に放流されたヒラメは北東の方角に向かって大きく移動しました。
2回目(1996年5月21日14:35放流)
14:35に放流されたヒラメは北またはやや北東に向かって移動しました。
3回目(1996年5月23日11:49放流)
11:49に放流したヒラメは北東に向かって移動しました。
4回目(1997年2月3日15:37放流)
15:37に放流したヒラメは多少西へ東へ行くけれど、全体的には北東に向かって移動しました。
5回目(1997年4月22日15:08放流)
15:08に放流したヒラメは北へ移動した後、およそ同じ水深の海底を東へ向かって移動しました。
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移動方向が潮流と一致していた
5回と少ない実験回数であるけれど、すべてのヒラメは直接最至近の沿岸を目指さず、北または北東の潮流と一致した移動を示しました。潮流と同じ方向に移動していたならばヒラメの行動について大きなヒントを提示しているように思います。
ただし、今回の報告では実験時におけるこの海域の潮流方向の詳細な記載がなく、移動方向と潮流の関係を詳細に知ることはできませんでした。そこで、この海域の最近の潮流を少し調べてみたところ、以下のように潮流の向きは必ずしも北または北東だけではないようでした。
しかし著者によると“この海域の潮流の向きとヒラメの移動方向は一致していた”との報告でした。この潮流の向きというのが今回の実験ではけっこう重要なファクターだと思うのですが、詳細な記載がなく確認できないのが残念です。
ただ、この実験以前の報告『網生簀内におけるヒラメとスナガレイの流れに対 する定位能力 平石ら 日本水産学会誌Vol. 61 (1995) No. 3 P 363-368』において、体重1kg全長45cm程度のヒラメでは流速21cm/secの条件下では海底に定位できずに潮流に流されてしまうことが報告されています。このことからヒラメは潮流に逆らわずに、むしろこれをうまく利用して潮流に乗って長時間、長距離移動をしていることが考えられます。
他にもわかったヒラメの行動とは
この実験によって水平方向の遊泳行動だけでなく垂直方向についても情報が得られました。垂直方向というのはつまり縦方向の移動、「潜る深さ(潜行深度)」や「潜る速さ(潜行速度)」のことです。いくつかわかったことがあるようなので紹介します。特にヒラメの大きさによって違いが見られました。
大きいヒラメほど深く潜らない(潜れない?)
今回の実験では放流後の潜行深度や速度も計測しています。その結果以下のグラフのように(体重の)大きなヒラメほど最大潜行深度が浅い傾向があることが示されました。これはヒラメの耐圧水深に限界があることに関係しているとのことでした。(つまり、大きなヒラメほど水圧に耐えられないので深く潜れないということ)
大きいヒラメほどゆっくりと潜る
今回の実験では4回は沖合水深400メートル、1回は水深70メートル地点で放流しました。放流された直後のヒラメは潜っていきますが、下のグラフのように大きなヒラメほどゆっくりと潜っていくことが示されました。
深く潜るものほど速く潜ることができる
沖合400メートルで放流されたヒラメの潜る深さ(最大深度)とその速さを調べると、深く潜ることができるヒラメほど潜行速度が速いことがわかりました。これは上で示されたように、大きなヒラメほど深く潜れないしゆっくり潜る(⇔小さなヒラメほど深く潜れて速く潜れる)ので合点がいくところですね。
大きいヒラメほど底からよく浮上する
放流後着底したヒラメが再び浮上する速度は大きなヒラメほど速くなる傾向が示されました。ということは大きいヒラメほどよく泳ぎまわっていることが予想されますね。
浅い場所ほどよく浮上する
着底した水深が浅いほど浮上する速度が速い(よく浮上している)ようです。深場になるほどあまり上昇をしないけれど、浅ければ浅いほど盛んに上昇行動を見せるようになるようです。
以上のようにヒラメの行動は垂直方向においても魚体の大きさや水深などによって違いが見られることがわかりました。潜る深さや速さというのは釣りには全然関係なさそうだけど、そういうもんなんだーという知識として持っていてもいいかもしれませんね。釣り太郎はこの垂直方向の行動とヒラメ釣りとの関連性は何も思い当たりません^^;浅い場所(サーフ)では大きなヒラメほどよく泳ぎまわっているんだろうなーっていうことくらいでしょうか。これらのことから何か釣りに関わることがわかる方がいましたらぜひ教えてください。
やっぱり潮の当たる側にヒラメは集まりやすい?
以前にも私は「潮のよく効いている場所や潮の当たる場所に魚が多い」ということを書きました。今回の実験の報告を読んでみて、やはり潮の流れとヒラメの魚影の濃さには関係性があるんじゃないかと再確認することができました。
ヒラメが集まりやすい地理的ポイント
上のほうでも書いたように、ヒラメは潮流に乗って移動していることが考えられます。そう考えるとヒラメは最終的にどんなところに行き着くでしょうか。どんなところに多く集まるでしょうか。集まるということは魚影が濃いということですし、ルアーでヒットする確率も高くなるはずです。
以前の記事でヒラメが釣れやすいポイントとして『地理的ポイント』と『局所的ポイント』ということを書きました。
この記事です↓
この中で私は鹿島灘と遠州灘を例に挙げました。どちらも岬に向かって大きな潮の流れがぶつかるポイントです。今回の実験報告から私が予想するには、この岬の潮のぶつかる側が特にヒラメの魚影が濃いだろうということです。
例えば下の鹿島灘であれば、親潮(千島海流)によって北から南に向かって大きな流れが発生しやすいので岬の北側。
遠州灘であれば、黒潮(日本海流)によって西から東へ向かう大きな流れが発生しやすいので岬の西側。
私はこの2カ所で釣りをしたことがないので本当のところはどうかわからないのですが、この辺で釣りをされたことがある方はいかがでしょうか?おそらく潮の効いている側のサーフのほうがヒラメの魚影が濃いのではないでしょうか。
ヒラメが集まりやすい局所的ポイント
地理的ポイントでは大きな流れに乗ってヒラメが集まるのでただでさえ魚影が濃いと思いますが、沿岸(サーフ)に流れ着く(泳ぎ着く)ヒラメがさらに溜まる場所はどこでしょうか。そうです、『潮の当たる場所』です。
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何も流れのない変化のないサーフよりも潮が効いてて、なおかつ潮が当たって“魚が溜まる場所”にヒラメは多いのではないでしょうか?そう考えると、潮の当たる場所でヒラメが釣れやすいというのも自然だと思うのですがどうでしょうか。
離岸流だって同じです。やはり流れがあって魚が溜まっていくので局所的ポイントでしょう。ただ、上述したように離岸流のど真ん中はヒラメにとって流れが速すぎて定位することができない可能性があるので、離岸流の真ん中よりは流れが緩やかな両脇がポイントになるだろうと思います。
ルアーでヒラメを狙うゴールデンポイント
こう考えていくと、『地理的ポイントの』の中にある『局所的ポイント』はまさにヒラメのゴールデンポイントですね。ルアーでヒラメを狙うのであればこういったことを考えながら狙っていくとヒットする確率が上がるだろうと思います。
ただでさえ個体数の少ないヒラメです。とにかくヒラメに出会う確率が高く効率よくヒットさせられる場所にルアーを投げることが大切です。
あなたのお住まいの近くにそのような場所はないでしょうか。グーグルマップを眺めて、現場に足を運んで状況を確認するなどして楽しみながらポイント探してみてくださいね。“自分でポイントを探していく”、それこそがサーフでのヒラメ釣りの醍醐味だと思います。